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雪へのあこがれ

 プーケット滞在中、部屋に毎日バンコクポストという新聞が届いた。どんなものかとペラペラめくっていたのだが、なんだか面白い。切り抜いてきたほど気に入った記事がある。タイ人女性の妻を持つイギリス人男性が書いたコラムで、有名な歌"Baby it's cold outside(外は寒いよ)"をもじった"Baby it's just so cold outside."というタイトルが目を引いた(原文はこちら)。以下、簡単に内容をご紹介。

 「私の妻はタイ人で、雪というものを見たことがない。そこで何度かイギリスに連れて行ったが、その時はチラとも降らず、がっかりされた。ハリーポッターのように魔法の杖で吹雪を出せない自分に責任を感じたほどだ。何週間か後、妻がイギリスから送られてきたクリスマスカードの絵をまじまじと見ているのを発見した。雪景色の中にコマドリがいるような伝統的な絵柄のものだ。なんでこういう季節にこんな景色を見に行けないのかと彼女は言った。

 そこで昨年、思い切って日本の富士山を訪ねた。少なくとも頂上付近には白いものがあるだろうと思ったし、妻にもそう約束した。結果はみじめなものだった。富士山の上半分はほぼ雲に覆われていた。雲が晴れた時、かろうじて雪がぽつんぽつんとあるのが見えたが、それは妻の期待していたようなものではなかった。困ったことに、妻はタイで20℃になれば寒いと言う。どうやら、彼女は寒さを感じることなしに雪を見たいようなのだ。」 このあと、12月の涼しい時期にいそいそとセーターを羽織り始めるタイ人の姿について話が展開していく。

 ベトナム人も、雪に対するあこがれが大きい。暑いからといってどこかの国のようにサンタクロースに軽装やサーフィンの格好をさせるようなことはしない。強い日差しの照りつける中、発泡スチロールや綿をふんだんに使ってなんとかホワイトクリスマスの雰囲気をかもし出そうとする。また、半袖を着ている状態で涼しくていい気候だなぁと私が思うような季節に、ベトナムの人たちは「最近、寒い」と言ってジージャンやらカーディガンを着始める。タイ人とベトナム人の可愛らしい相違点を発見させられた興味深い記事だった。

 明日から2月いっぱい一時帰国します。雪は見たいような、見たくないような。

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去年のクリスマス、TAXトレードセンター前にて

 


バタバタの合間に [コズー]

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 日本からベトナムに戻りプーケット旅行に行くまでの10日間に、Nと遊んでもらいながら書いた記事がある。Nの影響を多分に受けた内容となった。興味のある方はこちら ↓

ベトナムナビ「ベトナムのニュースから」第8回:貧しさに共感する心

(ベトナムナビにアップされた当初は記事の一部が抜け落ちており、1月25日に修正してもらいました。アップ当初に読まれた方は[3. 過酷な運命を乗り越えろ!]の後半をご一読願います。)


青のアンダマン [旅行]

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人懐こい犬
 

 ベランダに出て、鳥の鳴き声を聞く。何種類いるか数えようと耳を澄ましたが、4種類目であきらめた。1種類の鳥が2通りの鳴き方をしているかもしれないとふと思ったからだ(「ピーヨ ピーヨ(高)」・・・5秒経過・・・「ガッガッガッガッ(低)」)。1月だからか熱帯植物の中を歩いても空気はむせかえるようではなく爽やかだ。部屋から水着を着てビーチに出れば、目の前には空と水平線とクリームがかった水色のアンダマン海が広がるばかり。

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楽園ビールと名付けたい
 

 会社から一週間の休みをもらえそうだと夫が言ったのは昨年末のことだった。ベトナム語の授業を休みたくないし、何より乗り物に乗りたくない私としては、正直なところあまりどこにも行きたくない。けれど、普段働きづめの夫は、せっかくもらった休みにはどうしても旅行に行きたいと言う。もっともだ。ホーチミンからの直行便が最近できたのと、飛行機のチケットが一人わずか70ドルということで(ビバ、Air Asia!)、タイのプーケット島に行くことになった。

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 滞在中に車で遠出する気はさらさらない。ホテルの目の前がマイカオ(Mai Khao)ビーチであることと、足がつかない深さが長く続くものなどホテルのプールも充実していたため、この7日間は水泳合宿となった。しかし、私は泳ぐのが好きなくせに日光にあたると短時間で頭痛がし始めるひ弱モグラでもある。夫がダイビングツアーに出かけた二日間はおとなしく休息していた。

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象と象の間にはバブルが出るスペース、寝転がれる 
 

 滞在し始めてまもなく、タイの人が語尾に「カー」をつけていることに気付いた。"Thank you カー."、"Enjoy your dinner カー."のように。Sawatdii kha.(サワッディーカー:こんにちは)、Khoop khun kha.(コーップクンカー:ありがとう)の「カー」に違いない。おそらく、日本語でいうところの「ありがとね」「ごめんね」の「ね」、ベトナム語でいうところの「ニャ、ニェー」みたいなものなんじゃないか・・・と夫と話し合っていたところ、そうではなかった。文末につけて丁寧な言い回しにするもので、女性が使う語尾のようだ。そうだったんですカー。それが判明したのは、滞在の最終日にタイ語のレッスンを受けた時のこと。「カー」にも何種類かあるそうで、"Thank you カー."と夫がまねして言った後に"カー."と返ってきたのは、「はい」の「カー」だったようだ。意味不明な言語のシャワーに、久しぶりに焦った。

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タイ語で名前を書いてもらった

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 マイカオビーチは、カメが産卵しに来るビーチだったそうだ。来なくなってしまったのは、2004年のあの津波があってから。人々は期待を込めて環境の改善に取り組んでいるようだった。いつか戻ってきますように。


A Hard Rock Day's Night [人]

 "タダー!"と言ってデジタル一眼レフを取り出したのは、写真好きのN。カリフォルニアの太陽が、再びサイゴンにやってきた。約一年ぶりの再会。Nは以前までフィルムの一眼レフを使っていて、フィルム代と現像代が高いとこぼしていたが、これでもう撮り放題だ。私にとっては見慣れてしまった通学路の風景も、立ち止まってカシャッと撮っている。

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つられて撮った
 

 外でも汗ばまないぐらいの気候なので、クレープ屋のオープンカフェに座った。目を輝かせて話す話題は、「新聞とか雑誌とか、普通の紙を材料にしてビーズを作って、それをきれいなネックレスにして売ってた。あと、そこら辺にある米の袋をおしゃれなバッグに作りなおして売ってるね、あそこの店。」 困っている人がいたら魚をあげるのではなく魚の釣り方を教える、という考え方に共感し、自分にも何かできることがないかと模索し続けているN。今回の旅行では、ハノイ、ダナンでストリートチルドレンの自立支援をしているレストランを見学し、カンボジアの状況も見てきたそうだ。

 Nは現在、人が捨てたものから作るフェアトレード製品について思案中だ。昨日の夜に思いついたのはね、と言って、あるデジカメ画像を見せてくれた。見ると、ペットボトル容器の中に、歯ブラシセット等が入っている。旅行者に便利な各種アメニティーグッズを、捨てられたペットボトルの容器に詰めて売るというアイディアだ。「人が飲んだ後のペットボトルって、衛生面で嫌がられない?」と私が聞くと、彼女はふーむと考えてからこう言った。カリフォルニアでは、リサイクル商品や、チャリティー的な意味が付加された商品に喜んでお金を使う人たちが多い。だからペットボトル上に「この商品の売り上げの一部は~~に寄付されます」と書いたらあるいは・・・。空を見つめ、思考する二人組。

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 次の日に見せてくれたのは、彼女の発明した便利グッズだ。フィルムケースの回りにカラフルなガムテープをぐるぐる巻いてある(写真)。旅行しているときに何かと役立つガムテープと、薬、安全ピンなど何でも収納できるフィルムケースが合体。「なにせうちにフィルムケースがいっぱいあってさぁ・・・。」一日一発明だね、と言って笑った。模索し続けるエネルギーはどこから出てくるのだろう。彼女は輝いている。

 お別れの日に、共通の友人Cの誕生日会に誘ってもらった。CはNと同じく、アメリカ育ちでご両親がベトナム人。踊りに行くのが好きなCが選んだ場所は、ベトナムに初めてできたHard Rock Cafe。ハードロックなお兄さん方の生演奏に、内臓も揺さぶられる。ヴォーカルのお兄さんに誕生日ガールとして呼ばれると、Cはお立ち台に上がり、投げキッスをした。やっぱアメリカ育ちは違うなぁ。その度胸がうらやましい。輝く人たちに触れてまぶしい一週間だった。


小さな妊婦、空を飛ぶ [人]

 この子ときどき何言ってんだか分かんないんだよな。でも私はふむふむとうなづく。10時間後には故郷の地が踏めるとテンションが上がり気味の小さな妻は、思いつくことをひっきりなしに話していた(これは酔い止めが効いた状態の私と似ている)。押し寄せる彼女のベトナム語の波は、うなづきというサーフボードに乗って右から左へ聞き流す。高波にまかれて上下が分からなくなった時には、笑顔という浮き輪につかまり聞き返す。「誰が、何したって?」

 その日私は、妊婦を寒いところで待たせてはいけないと早めに待ち合わせ場所に着いたのだが、彼女はさらに早く来ていた。駅ビルで中華料理を食べたのだけど、あんまり食べられなかったとのこと。彼女は片手にハンドバッグ、もう片手には重そうな紙袋を下げていた。彼女の荷物を持ってあげられるよう極力少なくするはずだった私の荷物も、結局同じような量になってしまっていた。スーツケースに入りきらないものをどうしても諦められない海外在住者の悲しい性だ。「持つよ」と彼女の荷物を一つ取り上げたところ、大丈夫、大丈夫としきりに遠慮された。だから私は荷物を取りかえそうとする彼女の手を、握った。必殺、ベトナム流コミュニケーション返し。安心したのか彼女のおしゃべりが心なしか増した気がした。

 今日一日、とにかく彼女にリラックスしてもらうのが私の任務だ。彼女が品川でパンを買っている最中に、私は隣のお店で小さなぬいぐるみを買った。10センチほどのくまがハートを抱えているものだ。成田エクスプレスの車内でそれを登場させると「私こういうの好きなの、なんで知ってるの?」と彼女は言い、バッグの持ち手にとりつけた。しばらくして彼女が眠り始めてから、私は大小様々のぬいぐるみがおいてある彼女の部屋の光景を思い浮かべていた。

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